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愛しては、ならない
第59章 再会②
『――菊野さんは、帰しません』
「――っ」
剛の涼やかな声が頭の中でこだまして、悟志は持っていたスマホを落としてしまう。
小刻みに震える手で拾い、菊野の番号をタッチするが、聞こえてくるのはまたしても『この電話は……電波の届かない場所にあるか……電源が入っていないためかかりません』という冷たいアナウンスだ。
「そんな筈はないだろ……」
何度やっても同じ事だった。
不意に目の奥が、鋭利な刃物で突き刺された様に痛み、両の掌で瞼を押さえた。
眼球の中に心臓がもう一つあるかのようにズキンズキンと脈を打っていて、熱い涙が吹き出してきた。
「……く……一体……どうしたんだ……菊野……何故……っ」