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愛しては、ならない
第59章 再会②
『悟志さん……っ……ああ……っ』
昨夜、ベッドの上で艶やかに乱れた菊野の姿が脳裏を掠めると、悟志は、荒れ狂う外の様子を見て意を決して呟いた。
「菊野――君を、剛と二人きりになんて……するもんか……」
悟志は上着のポケットの中の車のキーを掴み、玄関へ向かおうとするが、突然視界が大きく揺れ、ソファへ倒れ込んでしまった。
身体を起こそうとするが、腕に力が入らない。
まるで溺れているかの様にもがく彼を、剛の幻が見おろしていた。
悟志は呻きながら、彼を睨む。
「……僕は……確かに……君の事を忘れてしまって……保護者としての責任を全う出来ていない……その事は本当に……すまないと思っている……」
剛の幻は、薄く笑って悟志を見ている。
手を伸ばすが勿論幻を掴む事は出来ず、悟志の浅黒い腕は虚しく空を掻いた。
「だが……こんな悪ふざけは止めてくれ……っ……菊野に八つ当たりをしないでくれ……恨むなら僕を――」
『八つ当たりじゃない……』
「――?」
剛の幻は、戸惑う悟志にはっきりと言った。
『俺は、菊野を愛している』