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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
剛はケトルに水を入れて火をかけて棚から紅茶の茶葉を出した。
「……炊飯器に美味しそうなご飯が出来てますね。スープも鍋の中にあるし……菊野さんが作ってくれたんでしょう?」
私は、華奢なデザインのテイーカップとソーサーを並べる彼の優雅な手の動きに見惚れながら、ドキドキして声も出せずにブンブン頷く。
剛はそんな私が可笑しいのか、またクスクス笑いながら言う。
「――わざわざこんな手の込んだ物を、有難うございます……折角ですし、一緒に食べましょう」
私は、目の奥からじわりと涙が浮かんできて、慌てて指で拭う。
剛が笑っているのが嬉しくて堪らなかった。
彼の笑顔を四年ぶりに見れた。もう二度と私には笑顔を見せてくれないかも知れない、と思っていたのに――