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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
剛が皿とフォーク、ワインのグラスを持ってやって来た時、私は重要な事を思い出して「あああっ」と叫ぶ。
そう言えばカードをまだ書いていなかった。
二つのグラスに二杯目のワインを注ぎ、剛が『今度はなんだ』とでも言いたげな眼差しを向けてくる。
「えっと……その……剛さん……ちょっとだけ目を瞑っててくれる?」
「何です?」
「いいから、良いって言うまで目を開けちゃダメだからね‼」
「はいはい……」
素直に瞼を閉じた彼の頬には、長い睫毛が影を落としている。
また見惚れてしまいそうになるが、私は無理矢理彼から目を逸らしてポケットからカードを出し、祝いの言葉を書こうと考えを巡らせる。
色んな言葉が頭に浮かぶが、どれもありきたりで当たり障りの無い物しかない。
私は、いつかもこんな事があった様な気がするとデジャブを感じていた。
そうだ……あれは、剛が中学三年のバレンタインの日……
ケーキの上に乗せるメッセージのチョコプレートに何を書くのか散々悩んで……
無意識に『好き』って書いてしまって……
「……て……あっ‼」
なんと、私はカードにその言葉を書いてしまっていた。