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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
彼の長くしなやかな指が頬を撫で、首筋に降りてきた瞬間に、身体の力が抜けていき、彼に寄りかかる状態になってしまう。
そんな私を彼はしっかりと後ろから抱き締め、耳元で優しく囁いてきた。
「行かないで……菊野」
「――‼」
「俺は……菊野の事を……ずっと……」
「ウソ……そんなの、嘘よ……っ」
「本当です……俺は、今でも……いや、あの頃よりも貴女を」
「だ……黙って‼」
私は、渾身の力で彼を突き飛ばし、躓きそうになりながらドアを開けて玄関へ向かい走った。