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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋



剛は、絶句する私を見て魅惑的に笑い、私を抱えたまま歩く。

リビングに向かうのではなく、このまま進んだ先には――

思わず彼のパジャマを強く掴むと、涼やかな声が頭上で聞こえる。



「分かりますよね……俺が何処へ向かっているのか」

「……っ」

「菊野さんはよく知っているでしょう、この家の間取りは」

「だ……ダメ」



首を振る私に彼は構わず寝室へと歩を進める。



「いや……俺はどこでだっていいですけどね……今ここで抱いてしまってもいいし……」

「――!」



思わず私は彼を平手打ちする。

彼はニヤリと笑って、涙を溜める私を見た。



「四年ぶりに叩かれました……」

「お……お願い……家に帰して……っ」



その言葉を口にした途端、彼に再び唇を奪われた。
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