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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
恐ろしい不安と、甘やかな期待と、背徳感が胸の中を交錯し、混乱しそうだった。
私は胸にバッグを抱いたままで身を固くして剛を見上げる。
彼は私の腕の横に両手を突いて、優しい笑みを浮かべていた。
窓を叩き付ける烈しい雨の音、雷の轟音に負けない程に二人の胸が早鐘を打っている。
「……これは今、要らないでしょう?」
彼はバッグに手をかけるが、私は抵抗して更にきつく胸に抱き締めて叫ぶ。
「だ……ダメ!帰る……帰るの!」
「またダメ……ですか?」
剛は苦笑いして身を屈め、キスを唇に落とす。
一瞬の事なのに、ビリッと全身に電流が走り、手の力が緩んだ。
その隙に彼がバッグを取り上げようとしたが、私は慌ててバッグの紐を掴んだ。
「……帰るのよ……わ……私は、貴方の……貴方の事なんて……もう何とも思っていないんだから――!」
心の中とは真逆の言葉を彼に浴びせるが、頬は熱くなり真っ赤に燃えて、唇は震えて彼からの口付けを待っていた。
涙がはらはらと流れ、きっとこの瞳は恋の色で染まっているに違いない。