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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
財布や化粧道具などがビックリするくらい大きな音を立てて散らばり、私は身体中が震えてしまった。
剛は深く溜め息を吐いて、私から離れると散らばった物を拾い集める。
背中を向けたまま、彼は小さく呟くように言った。
「……そんなに……俺の事を拒むんですか……」
「……っ」
「俺は……どうしても腑に落ちなくて……菊野に会って確かめたいって思った……だから今日……雨に打たれながら走って……」
「――!」
胸を深く矢で撃ち抜かれたような気持ちになる。
剛は、この酷い天候の中、私に会うために――?
彼の肩が大きく上下した。
「ひょっとしたら……菊野もまだ俺を思っているかも知れないなんて……
馬鹿な思い込みだったのかな……」
諦めた様な悲しい声色が私の胸を抉る。
「つ……剛さ」
何を言えばわからなかったが、何かを言わずにはいられずに、つい彼の名前を口にした時、彼が床に転がっていた何かを拾い上げて、息を呑む。