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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
悟志を愛そう、今自分が手にしている物を何よりも大切にしようと、言い聞かせて生きてきた。
でも心の奥底ではずっと剛を想っていた。彼を待っていた。あんな別れ方をしたのに、あんなに酷い仕打ちを彼にしておきながら、何処かで(彼が私をまだ想ってくれていたら――)等と愚かな考えが頭に掠めることもあった。
母として妻として毎日慌ただしく過ぎていくうちに忘れられるだろうと思っていたのに。
自分の中にある彼の眼差しが、声が幾度となく甦っては私を離してくれなかった。
そして今――
大好きな彼の声をずっと聞いて、彼の瞳で見詰められて抱き締められて口付けられて――
私はもう、堪えられない――
このまま、彼を忘れたふりなんて、嫌いになったふりなんて、出来ない――