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愛しては、ならない
第9章 遊園地での賭け④
だがいくら待っても暗闇のままだ。
防音のスリラーハウスの中は、外の遊園地の賑わいを完全にシャットダウンして、重く不気味な無音の暗闇の世界と化した。
「……そうだ、電話……電話してみよう!
遊園地のスタッフさんが気付いてくれるかも……」
ズボンのポケットを探ると、空振りの指の感触に、落胆する。
「やだ……
私、祐樹に携帯を預けて来たんだっけ……」
途方に暮れて周りを見回し、頭の中をフル回転させる。
「あっ!
何処かに、非常ベルか、非常ボタンがあるはずだわ……!」
私は、勇気をふり絞り立ち上がると、ゆっくり、注意深く歩を進めた。
「懐中電灯があればいいのにねえ……
――て、大体がそんな物、常に持ってる訳がないじゃないっ!」
怖さを紛らす様に、ノリツッコミをしてみるが、自分の空元気の声が、虚しく辺りに響くだけだった。
「……ふっ……ぐ」
我慢の糸が切れて、涙が溢れ出す。