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愛しては、ならない
第9章 遊園地での賭け④
「だ……駄目……
また泣いたら……っ!
私は……私は、大人なんだから……っ」
私は、唇を噛み、目の奥に力を込める様に瞑るが、次から次へと溢れる涙は止まらない。
腰が引けた情けない体勢で、壁伝いに歩くが、出口に向かっているのかさえ分からない。
暗闇の中で方向感覚が狂ってしまった様だ。
呼吸がヒューヒューと鳴り始め、私は口を押さえる。
「ま……まず……
喘息……が」
空気が、そこはかとなく薄く感じられ、自分の気管が狭くなるイメージが脳裏に浮かんでしまう。
「ゲホッ……」
不安になると、症状が出てしまう事があるのだ。
「もうっ……
こ、こんな作り物に怖がるなんて……
私ったら……意気地無し……」
唐突に、剛の諦めた様な色が常に沈む達観した瞳や、何処か悲しげな口元を思い出す。
――そうよ、剛さんは、うんと小さな頃に、もっと怖くて辛い思いをして来たのに――