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愛しては、ならない
第62章 愛しては、ならない②
「私……ダメね……」
彼の頬にポツリ、と涙が落ちる。
彼の涼やかな目元が微かに震えるが、安らかな眠りを妨げる事にはならなかったようで、規則正しい寝息が寝室に響く。
そう言えば、もう外の雨は止んだのだろうか?
ずっと彼から与えられる愛の言葉や囁きに夢中で、途中からはそれ以外聞こえて居なかったような気がする。
――何度も何度も私の名前を呼んで……
求められるまま、このまま……彼と手を取り合って生きていけたらどんなにいいだろう……
今まで何十回、何百回とそんな都合の良い事を考えた。
考えても無駄なのに。
どんなに私が剛を好きで、剛も私を思ってくれていたとしても、そんな夢想は叶うはずはない。
誰かを不幸にしてしまう恋をしてしまった私は、やはりこのまま元の生活に戻る訳にはいかない。
私は唇を結び、剛を起こさない様に注意深くベッドから抜け出した。