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愛しては、ならない
第9章 遊園地での賭け④
剛さんは……
長い間両親に放って置かれて独りで家に居る間に、何を思っていたのだろう……
いや、かえって、独りの時の方が、彼には安息の刻(とき)だったのか?
私には、分からない……
彼に、聞く勇気も持っていない……
私は、涙を拭い、唇を結び前を向いた。
――どっちが前でも後ろでも構わない……
とにかく、此処から進んでみせる――
浅い呼吸で、肩で息をしながら私はゆっくり進んでいた。
どれ程歩いたのか、今、何時なのかさっぱり分からない。
「――ゲホッ……ゲホッ」
大きく咳き込み、壁に凭れた時、何処からか靴音の様な音が響いた。
「……だ、だれ……?」
「――さん……
菊野さん――!」
反響しながら耳に届いた、低い、でもまだ少年ぽさの残る声――
私の胸に、火傷しそうな程の恋しさがせりあがって来た。
「つ……
剛――さん――!」