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愛しては、ならない
第62章 愛しては、ならない②
よく考えたら、服が乾くのを待っていたら、冗談でなく夜が明けてしまう。
私は暗い廊下をそろそろと歩き、寝室のドアをなるべく音を立てずに開け――たかったが、キイ、と大きな音が響いてしまい、私自身が驚いて叫びそうになってしまう。
慌てて口を掌で押さえ、眠る剛を起こさない様に注意しながら部屋の奥のクローゼットを開け、何か着るものがないか探す。
今は非常事態なのだ。こうなったら剛の服を借りて着て行ってしまおう。
シャツを見つけ急いで着ようとするが、焦ってしまいボタンがうまく嵌まらない。
指が震えて、ボタンホールにボタンを通せないのだ。思わず舌打ちすると、不意に後ろから強い力で引っ張られ、今度こそ私は悲鳴を上げた。
「きゃっ……」
鼻腔を擽る、私が良く知っている薫りに泣きたくなってしまう。
私が大好きな、貴方のシャボンの薫り。大好きな貴方がいつも纏っている薫り――
「……着るのを……手伝ってあげましょうか?」
「――っ」
耳元で囁かれ、私は瞼をキツく閉じた。
――ああ……どうしよう……
貴方に、また捕まってしまう……