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愛しては、ならない
第62章 愛しては、ならない②
「……いい薫りがします……お風呂に入りました?」
彼の息が耳にかかると、それだけで私は蕩けて無くなってしまいそうだった。
そう、いっそのこと、このまま彼に溶かされて地に吸い込まれてしまいたい――
もう、恋心に翻弄されたくない。恋は天に昇るほどの高陽感と、地の底に叩き付けられた様な強烈な痛みを交互に味わう物なのだろうか。
いや、それは、私が許されない恋をしてしまった事の当然の報いなの――?
私はもう、疲れてしまった。
このままでは心が持たない――
胸のボタンを嵌めると見せかけて、シャツを脱がそうとする彼の指をそっと私は掴み、静かに言った。
「剛さん……私、帰ります」
彼が息を呑む気配を感じながら、私は唇を噛む。