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愛しては、ならない
第9章 遊園地での賭け④
眩い灯りがどこからか、こちらを照らし、私は眩しさに手を翳す。
「菊野さん……
そこに居ますか?」
初めて聞く、焦りの混じる剛の声に、私は嬉しい、と思ってしまった。
――私を、探しに来てくれたの?
少しでも私を心配してくれたの……?
徐々に恐怖が薄れ、代わりに強烈な恋しい感情が沸き上がり、私は彼を呼んだ。
「剛さん――!
来て……ここに……」
「――菊野さん !」
靴音が迫って来て、私は闇に向かい手を伸ばした。
「剛さ……」
眩い白い光が瞼の裏まで照らした瞬間に、力強い腕が私を抱き締めた。
「良かった……
菊野……」
薄れ行く意識の中、その低い声に、私は身体を震わせた。
(――剛さんじゃ、ない……
この腕の力に、煙草の匂い……
私……が……今……
逢いたいのは……
貴方じゃない……の……に)
「――悟志……さん……?」
そう呟き、私は眠る様に崩れ落ちた。