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愛しては、ならない
第62章 愛しては、ならない②
私は今どんな顔をしているのだろう。
彼に次会えるのは何時(いつ)になるのか――ひょっとしたら、これきり二度と会えないのかも知れない……だから、なるべく綺麗に自分を見せたかった。
私は今、彼が「綺麗です」と言ってくれた私のままだろうか?
涙を止める事が出来ないけれど、とびきりの笑顔を彼に見せてお別れをしたかった。
口角を上げて、頬を引き上げて、笑顔になるように顔の筋肉を動かしてみるが、ちゃんと笑えているの?
私は剛に精一杯の笑顔――かどうかわからないけれど、笑った顔を向けて努めて明るく話す。
が、口が縺れて上手く言えなかった。
我ながら無様だ、と思う。
「……だ……だって……私の方が年上なんだから……び……病気……になったりしたら……剛さん……が苦労するのよ……?
下手したら、か、介護する羽目になっちゃったりして……」
「――菊野っ」
剛が、私の頬を両手で挟んでひた向きな眼差しを向けてくる。
――ああ、ダメ。冗談ぽく軽く言って誤魔化したかったのに。
全然上手く出来ない。きっと貴方にはお見通しなのよね。
私の気持ちが言っている事と真逆な事が――