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愛しては、ならない
第63章 once again
悟志は、深く呼吸してから私の左手を大きな掌で包み込む様に握り、よく通るバリトンの声で、淀みない口調で言った。
「菊野……僕と、結婚してくれ」
彼の手はとても熱く、私の身体まで火照って来てしまう。
それに、目の前で彼が真っ赤になりながら真っ直ぐに私を見詰めているのだ。恥ずかしくて、顔を逸らしたくなるけれど、彼の大きな目はキラキラと輝いて、私を離そうとしないのだ。
私は吃りながら答えようとするが、上手く言葉にならなかった。
「……そ……そんなの……いけないわ……だって……わ、私はっ」
何故、上手に言えないのだろう。私は大人で、彼の妻なのに。彼と長い間一緒に居るのに。
何故、こんなに緊張しているの?何故、唇が震えるの?
――当たり前だ。だって、初めての本当のプロポーズだから、だからこんなに狼狽えてしまう――