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愛しては、ならない
第64章 エピローグ
――――――
「……このケーキ……メッチャ美味い‼なあ綾波、お前も食えよ――折角母さんがお前の為に作ってくれたんだろうが」
十年前の思い出に浸りきって、意識が飛んでいた俺は、ライヴ会場のテントの中、皿の中の切り分けられたケーキを見詰めたままで固まっていたようだ。
隣では祐樹がケーキを頬張り、唇の端にクリームを付けたままで俺を咎めるように見詰めている。
そうだ。俺は今日で三十になったのだ。
あの二十歳の誕生日から十年も経ってしまったのに、あの夜の出来事がまるで昨日のように鮮明に残っている。
『剛さんが三十になったら、私は四十四なのよ?』
菊野の囁きが耳元で聞こえた様な気がしたが、後ろから三広が飛びついて高い声で叫んだ声だった。
「あ――‼祐樹と綾ちゃんだけで美味しい物食べてるっ‼ずーるーい、ずーるーい‼」