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愛しては、ならない
第64章 エピローグ
二人は時折腹を抱え、身体中を震わせてテントの骨組みをバシバシ叩いて声にならない笑い声をあげている。
野村はそれでも起きずにスヤスヤ寝息をたてていた。瞼に目を書かれた彼を見て、稲川も指をさして爆笑している。
「全くどいつもこいつも阿呆か」
俺は奴等を無視する事にして、ケーキにフォークを刺して口に運ぶ。
甘いクリームとスポンジはあっという間に口の中で溶けていく。
菊野の甘い唇を思い出してしまうが、首を振りひとり苦笑した。
――全く、阿呆なのは俺も同じだ――
すると、テントを叩きつけていた雨音が突然小さくなり、周りがざわつき、一気にスタッフ達が動き始める。
演目のトリのBEATSの前に激しい雨が降りだし、雷雲も出てきたため、フェスは一時中断していたのだ。
暫く待って止まない場合はもう中止にするかどうするのか――と話し合っていた矢先だっただけに、スタッフ達は張り切って仕事を始めている。