この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第9章 遊園地での賭け④
「ほし……い……のっ」
手を伸ばすと、力強い温もりに包まれて、暗闇に一筋の光が差した。
「……野……
菊野……!」
「……さと……しさん?」
見慣れた寝室の天井と、心配そうに見る優しい夫の顔が目の前にあった。
悟志は長い溜め息を吐くと、私の手を強く握り締めて呻く様に言った。
「良かった……
菊野……」
私は、どの位眠っていたのだろうか?
時間の感覚がまるで無かった。
身体を起こそうとするが、目眩に襲われ、またベッドに沈んでしまう。
悟志が髪を撫で、目を覗き込み笑った。
「何か、食べるかい?
……実はね、お粥の次はうどんに挑戦したんだよ……」
得意気な悟志に私は思わず笑った。
「……おや、その顔は僕の腕前を疑ってるね?
見ててご覧、とびきり美味しいうどんを作ってあげるからね!
ちょっと、待ってなさい」
悟志は腕捲りをして寝室を出て行った。