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愛しては、ならない
第10章 カーネーション
「えっ!?」
私は目に残る涙を拭い、頬を押さえて園長と剛を交互に見たが、二人は笑いを噛み殺し肩を震わせていた。
剛がとうとう吹き出すと、園長も釣られて大笑いした。
私は急に恥ずかしくなり、その場から逃げ出したくなってしまうが、お腹を抱えて笑う剛の姿が嬉しくもあり、二人と一緒に笑い合った。
ひとしきり笑い、溜め息を吐いた私に、剛が静かに言った。
「……呼び方は……
努力します」
「えっ……い、いや……
そんな改まって頑張る宣言しなくても良いのよ?」
剛は、澄んだ目でじっと私を見て、ポツリと呟く。
「菊野……さん」
不意に名前を呼ばれ、身体がフワフワ舞い上がる程に高揚してしまう私だったが、何とかそれを表に出さない様に努め、精一杯のしかめっ面を作った。
だが、顔をひきつらせている様にしか見えないのかも知れない。
園長が、私の顔を見てまた笑っているのだ。