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愛しては、ならない
第10章 カーネーション
「だから基本僕は、ちゃんと食べられる物、要するに腐った物だとか、石ころとか紙屑とかで無ければ充分なんです……
ここに来たばかりの頃は、食べ物の味だとか、よくわかりませんでしたし、食べられればなんでも良かったんです」
「……っ」
淡々と話す彼の顔を見る事が出来ず、私はついにしゃくり上げてしまうが、温かい感触が背中を包み、ドキリとして顔を上げると彼の首が目の前にあった。
「つ……剛さんっ」
剛は、私をぎこちない手付きで抱き締め、頭を撫でていた。
私は、涙がいっぺんに引っ込んでしまい、頬が焼ける程に熱くなり、思わず彼の胸を押し戻した。
すると、彼は一瞬傷付いた色をその表情に浮かべ、目を臥せた。
「……すいません、つい……」
「や、やややっ!
違うの違うの!
謝る事じゃな、ないのよっ!?
ただ、ちょ、ちょちょっとビックリして……」
私は、バクバク鳴る心臓を何とか宥めようと胸に手を当てるが、彼の悲しげな瞳を見ると、益々胸が高鳴り苦しい程だった。