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愛しては、ならない
第10章 カーネーション
「……家族が泣いたら、抱き締めたり、手を握る物なんですよね」
剛は、中庭の向こうでドッジボールに興じる施設の子供達に視線を移してポツリと言った。
「――え?」
「僕は……
僕だけじゃなくて、ここにいる子供達は、目の前で誰かが泣いたり、悲しんだりしている時に、どうやって振る舞っていいのか分からないんです。
……自分達が、抱き締められた事がないから……
分からない」
私は、立ち上がり、外を眺める剛の背中を見詰めた。
「――祐樹……
祐樹君が、いつか、菊野さんが泣いていた時、抱き締めて居たのを見て……
そういう時には、そうするのがいいのかなって思ったんです……
けれど、驚かしてすいません……
僕は、あなたの子供じゃないのに……」
「剛さん――」
気が付くと私は、彼に駆け寄り、後ろから抱き締めて居た。