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愛しては、ならない
第10章 カーネーション
剛は、鼻をかんではゴミ箱に捨て、また涙が溢れ、拭いては鼻をかみ丸めて捨てる動作を繰り返す私を見て口元を歪め、ついには笑い出した。
(ま、また、笑われちゃったよ…)
大人の女には程遠い自分を思い知り、私は別の意味で悲しくなり新たな涙が浮かんで来るが、剛が右手をギュッと握り締めて来て、息が止まりそうになる。
「……好きな食べ物が今、分かりました」
「……」
私は、ドキドキしながら彼の目を見た。
彼は、静かに笑いながらこう言った。
「――菊野さんが作ってくれた物が、好きです」