この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第10章 カーネーション
パイが焼けた事を知らせる電子音が鳴り、いつの間にか椅子の背にもたれ掛かり眠っていた私はハッと瞼を開ける。
目尻にいつの間にか涙を浮かべていた私は、指で瞼を擦るが、膝の上にハンカチが載せてある事に気付き、手に取る。
(誰かが、置いてくれたの……?
昔の夢を見て寝ながら泣くなんて恥ずかしい……)
ハンカチを握り締めてぼうっと座っていたが、リビングの奥からボソボソと話し声が聴こえてきた。
「……似てないじゃないか……もっとこう」
「え――っ
剛のも……ここがさあ……」
「これでどうだ……?」
「う~ん……
もう少し可愛く描いた方が……」
「……だな」
剛と祐樹の声だ。
私は思わず寝たふりをして聞き耳を立てた。