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愛しては、ならない
第10章 カーネーション
「でもダメだよ~剛。
ママはパパの物なんだから!」
無邪気な祐樹の軽口に、私の胸が益々圧迫される程鳴る。
「ハハハハ……
さて、じゃあ菊野さんが起きない内に、そ~っと置いてくるか……」
「うん!」
私は、目をぎゅうっと瞑り、一生懸命寝たふりを続行する。
二人が近付いて来るのが衣擦れや、フローリングの軋む音でバレバレなのだが、彼らの期待通りの反応をしなくてはならない。
変なプレッシャーをひしひしと感じながら、いつ瞼を開けて驚いてみせようかと、ぐるぐると考える。
ふと、石鹸の香りが鼻腔を擽り、それは剛の纏う香りなのだと直感し、頬が熱くなる。
今、彼は、私のごく近くに居るのだろうか?
祐樹のクスクス笑いも聞こえてきて、つい私もつられそうになる。