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愛しては、ならない
第10章 カーネーション
「剛……笑ってないで早く~!
王子のキスは女の子を幸せにするんだからねっ」
祐樹は大真面目に言っている。
(女の子向けの本ばかり読ませ過ぎたかしら……)
「王子って……
ハハ……分かったよ」
(分かったよって……
ええ――っ!?
ち、ちょっとちょっとちょっと待って――!)
剛の石鹸の香りが鼻腔を擽ると同時に、椅子の背に彼が手を掛けたのか、ギシリと小さい音がする。
私は心臓がドキドキするどころか、身体中の血管の中の血が三倍速で流れているのではないかという程に気が逸る。
(う、嘘でしょ――!)
小さな吐息が耳にかかった瞬間、私は瞼を開けてしまった。
びっくりした様な剛の見開かれた瞳が目の前にあり、呼吸が止まる。
彼の唇が、頬に触れる寸前だという事が分かると、私は激しく動揺して椅子から転げ落ちた。
「マ、ママ――! 」
祐樹が飛んで来て、剛と二人がかりで私を起こしてくれた。