この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒
グッと詰まった私に、剛は悩殺する様な甘い瞳を向けて――
彼は無意識なのだろう――
手を差し出してきた。
「菊野さんからのバレンタイン、貰いますよ……」
「こ、これは違うから!」
私は絶叫して、剛に背を向けてリビングから逃げようとするが、カーペットの端に足を取られてしまいよろけてつんのめった。
「あああ」
「――危ない!」
剛が素早く腕を出したが、微妙に間に合わず、結局二人してひっくり返ってしまった。
「ん……っ」
「……」
床に頭をぶつけ、痛みに呻いた私は、唇に何か当たっているのに気付き、瞑っていた瞼を開けると、すぐ其処で澄んだ剛の瞳が私を捉えていた。
「――!」
彼の瞳が、何故こんな近くにあるのか、真っ直ぐな髪が何故頬に触れているのか、唇が塞がれているのは何故なの――?
と軽くパニックになりかけたが、彼が私の上に覆い被さる形になり、偶然唇が当たってしまったのだ、とようやく理解する。