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愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒
普段は意識しない時計の秒針が二人だけのリビングに響き渡る。
お互いの唇が合わさったまま、見つめ合う。
唇が熱を持ち、媚薬が仕込まれた様に、身体が熱く焼けていく。
彼も、瞬きもせずに私の目を見ていたが、僅かにその唇を動かして何かを呟いた時、それが甘い刺激になり私はつい声を漏らしてしまった。
「あっ……」
「――」
剛は、目を見開いた。
私は、我にかえり、身体を起こし、後退りながら彼から離れる。
立ち上がって、寝室に逃げたい。
けれど、腕も、足も、指先一つでさえ、思うように動かないのだ。
甘い痺れで、力が入らない。
「菊野さ……」
彼が何かを言う前に、私は必死に喋る言葉を頭の中で探す。
――取り繕わなくてはいけない。
まさか、貴方と唇が触れあって、ときめいた事を悟られる訳にはいかない。
だって、だって私は、貴方を愛してはいけないんだから……!