この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒
床にポタリ、と温かい涙が堕ちる。
剛は瞳を揺らし、近付いてくるが、私は、首を振り更に後ずさった。
「……すいません……
驚かして……」
剛は小さく呟くが、前にもこんな事を言われた様な気がして、私は唐突に笑いが込み上げてきた。
「あ、アハハ……
ふふ……ゴメンね……
ふ、ファースト……キスが……
こ、こんなおばさんで……っ」
笑いながらも涙は止まらず私は口を押さえてしゃくり上げる。
剛が今どんな顔をしているのか怖くて見る事が出来ずに、私はただフローリングに涙が堕ちる様を見詰めた。
「……いえ、初めてでは、ないですから……」
剛のその言葉に、抉られた様な痛みを目の奥に感じ、私は呻いた。
「……い、痛いっ……」
「菊野さん――?」
剛が肩に手を掛けてきた時、私は飛び退く。
「……だ、大丈夫……
少し休めば、治るから……」
私は、這うように剛の側をすり抜け、寝室のドアを開けベッドへ倒れ込んだ。