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愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒
枕に顔を埋めて、目を強く瞑るが、浮かんでくるのは彼の眼差しばかりだった。
至近距離で、お互いの唇が触れあいながら見つめ合ったあの瞬間(とき)の前に時計の針を逆戻ししたかった。
世界中の時間が狂ってしまったとしても、戻りたい――
知らなければ良かった。
彼とのキスなんて。
好きな人とのキスはきっと胸が踊って甘酸っぱいに違いない、と私は未だに少女の様な幻想を抱いていた。
震えて、激しい嗚咽が止まらず、私は、俯せになったまま身体をくの字に折りながら泣いた。
苦しいだけ。
彼と唇を合わせたら、嬉しい処か、もっと欲張りになる自分が居た。
唇を合わせたら、抱き締めて欲しい。
抱き締めたなら、熱い眼差しで見詰めて甘く囁いて欲しい。
「ふ……ふふ……ふ……
アハハハ……アハハハハハ!」
私は、ヒステリックに泣きながら笑った。
――彼の幸せを一番に願う、その力になれたら、なんて……
何を言っているんだろう……
私は、剛さんに抱き締めて欲しいから……
だから、側に置いているんだ……
こんな不純な事を想っているのに、保護者ぶって、馬鹿みたい……!