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愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒
シーツをくしゃくしゃにして掴み、私は咽び泣いた。
泣くだけ泣いたら、気持ちを切り替えて、いつもの自分に戻らなくてはならない。
夜には、父も母もやって来るし、悟志も帰ってくる。
祐樹も、敏感な子だから私の様子がおかしい事を察してしまうだろう。
こんな乱れた心では、皆の前に出ていけない――
私がそうして寝室に籠ってしまい、剛は差し出した手を降ろし、その拳を固めて溜め息を吐いていた。
剛は、違和感を感じながらも、西本の家に馴染もうと努めているつもりだった。
この家の空気は好きだった。
菊野のとぼけた大人らしかぬ振る舞いや、時に見せる然り気無い優しさには救われていたし、祐樹も生意気になっては来たが自分の後をいつも付いて回り、可愛いとも思う。
悟志は、父親風を吹かす事は無く、最初から剛を一人の大人として尊重してくれた。
朗らかな悟志は、家の中をいつも明るくしている。
祖父母も、剛が西本家に来た事を非常に喜び、特に花野は剛に熱心にピアノを教えていた。
家庭教師の真歩も、剛を弟の様に可愛がり、だが甘やかしたりはしなかった。
勉強に於いては決して妥協せず、ビシビシ指導してくれて、そのお陰で第一希望の公立に合格出来たのだ。
ここの人達には、本当に感謝しかないのだ。
だが――