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愛しては、ならない
第12章 その花は、手折(たお)られて
――全く。
やっぱりまだお子様じゃないか。
剛は祐樹の後ろ姿にクスリと笑いを溢し、階段を上がり自室へ入ると、ベッドの上に置いてあるビニールに入ったチョコを手に取り身体を横たえながら天井に翳して眺めた。
ホワイトチョコの表面に、丸い文字で
"すき"
と描かれているそれは、紛れもなく菊野の字だ。
必死に隠そうとしている彼女を思い浮かべ、剛は唇を弛めた。
「何も、隠す程の物じゃあ無いだろうに……
おかしな人だな」
剛は、菊野が自分に好意を持っている事は察していた。
だがそれは、
"親に愛されなかった可哀想な子供にかける同情"
から来る物なのだろう、と思っている。
"好きです……"
清崎の甘さを含んだ声が過り、剛は呟いた。
「――その"好き"である訳無いだろ……」