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愛しては、ならない
第12章 その花は、手折(たお)られて
一瞬、心がざわついた自分が愚かに思えて、剛は低く笑った。
菊野が元気になったら、このチョコの事を問い詰めてやろうか――
と可虐心まじりの悪戯な企みが浮かぶが、言われた事を全て素直に受け止めてしまう彼女の事だ、先程の様に泣かれてしまうかも知れない。
これ以上、彼女のそんな顔を見たら、自分の中の辛うじて保っているバランスが崩れ去る様な気がする。
剛は長い溜め息を吐き、机の上のラッピングされた小さな箱に目をやり呟いた。
「……渡さなくちゃな」
剛は、今までのバレンタインのお返しと、毎日手の込んだ食事を作ってくれる菊野にお礼をしたいと思うが何をしたら良いのかわからない、と真歩に相談したのだ。
真歩は、豆鉄砲を喰らった鳩の様にキョトンとして剛をマジマジ見た。
剛はその反応に、相談した事を後悔したが、真歩は剛の手をガシッと握りブンブン振って大喜びした。
「ナイスな事を考えるじゃない――!
あの子、剛君が大好きだから、そんな事されたらきっと大泣きするわよ~!
よしっ!私も一緒に何を贈るか考えてあげる~!
あの子を感激させて泣きわめかせようね~!」
「いや……泣きわめくのはちょっと」
剛は真歩の張り切り様に引いたが、真歩は菊野の好きな物や欲しがるであろう物を然り気無くリサーチしてくれて、非常に助かったのだ。