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愛しては、ならない
第12章 その花は、手折(たお)られて
剛は、プレゼントを手に寝室へと暗い廊下を静かに進み、僅かに灯りが漏れているのを見て、頬を緩めた。
(菊野さん、起きている……丁度いいな)
多分、彼女は昼間の出来事が気まずいのだろう。
(――俺が気にして居ない事を、然り気無く態度で示せば、安心するかも知れない……)
いや、気にして居ない訳では無い。
彼女の柔らかい唇や、髪の甘い薫りが頭から離れないのだ。
剛は頭を振って深呼吸して、ノックをするが、返事がない。
ドアノブに手を掛けるが、開けて良いものかどうか迷っていると、鼓膜を切り裂く様な叫びが聴こえてきて、全身が総毛立つ。
剛は、ドアから二、三歩後退り、耳を澄ます。
叫びは、小さくなったり、突然大きな物になったりしている。
聴いたことの無い声の筈なのに、本能で悟ってしまう。
――菊野の声だ……
彼女が、男に責められ、啼いているのだ……
剛の全身の毛穴が開き、寒気を感じた。
グラリ、と目眩を覚え目を瞑ると、幼い頃良く見た光景が甦る。
裸の両親が、目の前で狂った様にお互いを掴み合い、舐め貪り、色んな姿勢で身体をぶつけ合い、顔を歪め叫ぶ姿が――