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愛しては、ならない
第13章 甘い、地獄の日々
「菊野……
可愛いよ……」
「やんっ……
ダメだってば……
つ、剛さんが……今に降りて……」
悟志は、優しい表情をまた一変させ、私をいきなり抱き上げた。
「えっ……な、何を……」
「――剛君が気になるなら、寝室へ行こう……」
「なっ……だ、ダメ!
こんな明るいうちから……っ!」
私は、悟志が思いとどまってくれる事を願い、抱き上げられながら彼の背中を叩く。
悟志は、胸の内に嫉妬と独占欲と、焦りの様な感情が渦巻いていた。
菊野が、剛の名前を出す度に胸が抉られる痛みを感じるのだ。
剛が菊野を見詰める目……
菊野が剛を見詰める目……
悟志は、彼が家に来た日から、密かに二人の間に存在する、何かを感じ取っていたのだ。
剛が菊野に向ける眼差しは、母親や、友人などに向けられる種類の物ではない様に見えた。
そして菊野も、特別な眼差しを彼に向けている様に見えた。
それは、自分がおかしな誤解のフィルターを通して二人を見ているせいなのだ、と最初は言い聞かせていたが、月日が経つごとにその疑いは薄まるどころか、より濃くなっていった。