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愛しては、ならない
第13章 甘い、地獄の日々
「――剛」
悟志のその呟きに、私はハッとする。
剛は、固い表情で階段をゆっくり降りて来た。
制服姿の剛は清廉で、そして優美ささえ醸し出している。
彼は、静かな佇まいの中で、瞳だけは燃えて居る様に見えた。
「……乱暴は、止めて下さい」
静かに言う剛に、悟志は何かを言い掛けるが、直ぐに口をつぐみ険しい顔で黙り込んだ。
悟志の腕の力が一瞬緩んだ隙に、私は渾身の力を振り絞り彼から逃れ、夢中で剛に向かい両の腕を伸ばした。
「剛さ――」
スローモーションの様に、周りの光景がゆっくりと回る。
剛は私を見て目を見開き、階段を走り降りて来る。
真っ直ぐな髪を揺らし、その瞳は私を見ている。
そのしなやかな腕は、私を捕まえた。