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愛しては、ならない
第16章 貴方との夜

剛は、彼女を振り返り気遣う。
「ゴメン……清崎……
今日は……」
彼女は、一瞬泣きそうに顔を歪めたが、直ぐに笑顔になり、頷いた。
「ううん、いいの……
お母様、大丈夫ですか?」
お母様、という言葉に険のある響きを感じてしまったのは気のせいだろうか。
私は、慌てて彼女にフォローする様に言う。
「ご、ごめんなさいね、デートの邪魔をしてしまって……
また、遊びに来てちょうだいね?」
彼女は優等生の笑みを浮かべ軽く頭を下げるが、私にはその笑顔を少し怖く思った。
「本当に、病院へ行った方が……」
尚も心配する剛に、私はブンブン首を振る。
「だ、大丈夫……
派手に血が出てるだけで、擦り傷だし……
直ぐに消毒すれば……」
――大丈夫だから、もう降ろして?
私は、剛にしか聞こえない程の小声で言うが、彼は首を振った。
「そ、そんな……」
私は後ろの彼女の視線が気になって仕方がないのだが、剛は降ろしてくれる気配がない。
そして、真歩の車に皆乗り帰る事になったのだった。
清崎の家に着く頃には、もうすっかり暗くなっていた。

