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愛しては、ならない
第16章 貴方との夜




私は、ふと
(これは、自分でも出来るじゃないの)
と今更気付き口を開き掛けるが、剛は察した様に優雅に笑い、首を振る。

「あ、あの……」


「ちょっとだけ我慢して下さい」


「……っ」


そっと触れたコットンから消毒液が滴り、擦り傷を刺激して思わず顔を歪める。


「……思ったより大きな傷で無くて良かったですが……
綺麗な肌が可哀想ですね」

「……やっ……
やだあっ!
剛さんたらっ!
なんか、お世辞が得意なセールスマンみたい~!」


私は、二人きりの気まずさと恥ずかしさを誤魔化す様に殊更明るく言った。


「お世辞ではないです。
……菊野さんは綺麗です」


「ひっ!」



剛は救急箱を片付けながらさらりと言うが、私は心臓が跳ね上がり、変な声で叫んでしまった。



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