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愛しては、ならない
第16章 貴方との夜



「プッ……」


剛は、吹き出した。


私はいたたまれず、立ち上がる。



「あ――っ!
も、もうこんな時間っ!急いで、ごごごご飯作るわね!」


キッチンへ行こうとするが、剛に腕を掴まれる。


「ダメです、動き回らないで下さい」


「え、ええっ……
大丈夫よ!
ただの擦り傷だし」


「擦り傷でもなんでもダメな物はダメです!
俺が適当に作りますから菊野さんはゆっくりしていて下さい……」


「きゃあっ」


剛は私をまた抱き上げて、ソファに座らせると、腕捲りをしキッチンへ引っ込んでしまった。


冷蔵庫の中身を見て何やら思案顔をし、食材を幾つか出し、鍋やらフライパンを用意して、手際よく野菜を切り始めた。


その小気味良い音が耳に心地好かった。


(……毎朝日課で見ている
『MOMO'Sキッチン』の俳優――桃太郎、じゃなくて名前何だっけ……
あの彼よりも、剛さんの方が断然素敵……)


私は、ついうっとりと彼に見惚れていたが、



「今のうちにお風呂を済ませて来たらどうですか?」

と声を掛けられて吃驚し、また


「ひっ!」


と変な声で叫んでしまった。


剛はそんな私を見て笑いながら米を研いでいる。


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