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愛しては、ならない
第17章 貴女との夜に
「好きです……菊野さん……」
「う、嘘……
こんなの、全部嘘よ!」
彼女はまた胸を叩いてくるが、先程よりも強い力で、俺は流石に眉をしかめた。
「だから……
嘘なわけないでしょう……俺は」
「――清崎さんに、キスしてた癖にっ!」
菊野が、爆発したように叫び、俺の頬を打ち、また打とうと手を振り上げる。
素早くその手を掴み、彼女に尋ねた。
「……見ていたんですか?」
「……っ……す、すごく熱烈に、してたじゃない……っ……
し、しかも、ホ、ホテルで……っ」
彼女の瞳はまた涙で盛り上がり、瞬きと同時に大粒の滴が落ちる。
――見られていた?
……確かに、彼女があのタイミングで現れた事を考えてみれば、それも不思議ではないかも知れない。
あの時には、確かに清崎の可憐さに夢中になっていたが、まさかあの場を菊野が見ていたとは――
俺は暫し狼狽えるが、ふと、菊野が今こうして泣いているのは、嫉妬しているからだろうか、という考えに突き当たり、不意に頬が緩む。