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愛しては、ならない
第17章 貴女との夜に
その時、ベッドサイドに置いてあるスマホが鳴り、菊野はビクリと震え視線を泳がせる。
俺は彼女を見詰めたまま言った。
「……どうぞ」
菊野ははだけたパーカーの胸元をかき集め、スマホを取ると青ざめる。
画面を凝視したまま取ろうとしない彼女の隣に腰掛け、チラリと見ると、どうやら悟志からの電話らしい。
「……出ないと怪しまれますよ」
「でも……」
「なんなら、言えばいい。
俺に襲われてるって」
「――っ」
「今、助けを求めても彼は間に合うかな?」
怯える彼女の姿に、俄に可虐心が芽生え、わざと意地悪く言うと、菊野は青ざめ、また涙を浮かべた。
「冗談ですよ……
そんな顔をしないで下さい」
しゃくり上げ始めた彼女の頭をそっと撫で、俺はスマホを取った。
『もしもし……
菊野?』
「……剛です」
電話の向こうで悟志の息を呑む気配が伝わった。