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愛しては、ならない
第18章 私も、愛しているのに
「菊野さん……
俺が欲しいんでしょう?」
「あっ……」
剛は、私の腕を掴むとグイと引き寄せた。
「……欲しいなら、俺を差し上げます……」
「つ……剛さんっ」
剛は、私の顎を掴み口付けた。
幾度も幾度も、私が立っていられなくなるまで。
私は彼の為すがままに唇を奪われ、うっとりとその胸の中に身を任せる。
「剛さん……私……」
「菊野……
僕の前から居なくならないでくれ」
その声に顔を上げると、私を抱き締めているのは剛でなく、悟志にすりかわっていた。
「悟史さん――!?」
「菊野……菊野っ!
どうか……」
力一杯抱き締められ、私は苦しさに呻く。
ふと、悟志の背中越しに、鋭い視線を感じた。
幼い姿の剛が、私を見ていた。
私が会った事の無い、小さな頃の剛だ。
頬は痩せこけ、破れた服を着て、たが瞳だけは強く輝いている。