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愛しては、ならない
第19章 恋の業火
「――?」
私は暫し時間を忘れ剛の寝顔を見ていたが、階下で、何か電子音が鳴っているのに気付く。
「……電話かしら」
足音を立てない様に気を付けながら下へ降りると、音は寝室の方からだ。
ベッドの上のスマホが着信を知らせていた。
「もしもし……」
『ああ、菊野?
私よ、お家は変わりない?』
「あ……お母さん」
電話の向こうは騒がしく、聞き取り辛かったが、花野だとすぐにわかった。
『あら?
電話が遠いせいかしら……
元気がないわねえ、具合でも悪いの?』
ギクリとして、私は明るい声を出して誤魔化す。
「え~?
そうだった?
私はいつも通りよ~!
アハハハ――!」
『……ならいいけど……
祐ちゃんと代わるわね』
直ぐに、祐樹の元気な声がした。
『ママ――!
スッゴく楽しかったよ~!
なんかね、弾いてる人の指がダンスしてるみたいだったよ!
アンコールが三回も起こったんだよ!
でね、俺、花束をステージまで持って行って握手して貰ったんだ!』
「そうなの……
良かったわねえ……」
私は、嬉しそうな祐樹の顔が思い浮かび、頬が緩んだ。