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愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情
私は迷わずその大きな浅黒い手を取る。
「は、はいっ!お父様っ!
か、帰りましょ――!」
「おうっ!
娘よ!
帰ろうか――!
今夜はカレーだってママが言ってたぞ――!
では、若者よ、さらば!頑張れよ――!」
男性は、彼に向かいもう一度芝居がかった口調で言うと、私の手を握り締め歩き出した。
何故、咄嗟に知らない男性に頼ってしまったのか、私にも分からなかった。
ただ、男性の、キラキラ輝く瞳が、私の父に似ている様な気がしたから――
つい、何も考えずに男性と手を繋ぎ歩いてしまっているが、駅までの一本道、彼がまだ私達を見ているかも知れない。
親子の演技を続けなければ……
歩いている間、私達は何も話さなかったが、男性の広い背中が何故かとても安心出来た。
――パパの背中みたい……
と思った。