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愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情
駅のコンコースまで辿り着き、男性は大きく息を吐き、私を振り返るといきなり爆笑する。
「な……なんで笑う……んですっ」
男性は、涙まで流し、ポケットからハンカチを出して――ぴしっとアイロンがかけられた青い布は、彼の清潔感そのものに見えた――
目尻を拭う。
「いや、だって君、お父様とか~!
ハハハハ……
何処のお嬢様とお父様なんだか……ひっ……」
「う……
な、なんか、口から勝手に出てきてしまって……」
(この人の演技も相当わざとらしいと思うけど……)
恥ずかしくなり俯く私の手を、男性は握り締めたまま言った。
「ねえ、お家は何処?
僕、車をこの近くに停めてるから、送ってあげる」
「え……」
「いや、だって君、相当怖かったんじゃない?
このまま一人で帰すの、オジサン心配だからさ」
「……」
言われてみて、私は初めて自分の指先が小刻みに震えているのに気付いた。