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愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情
私は、急に怖かった気持ちを思い出し、涙が込み上げて来た。
「あ~……
泣かしちゃったなあ……う~ん、これじゃあまるで僕が悪者……」
「ひっ……こ、怖かった……うっ……」
男性は、身を屈め優しく私の頭をそっと叩く。
「あ――、僕、怪しい者じゃないからね?
……そうだな、信用して貰う為に~
はいっ!
これ、車を取ってくる間預けるから!」
男性が私に渡したのは革の財布だった。
「え……ちょ、これ」
驚く私に、男性は何故か敬礼し、
「僕は、西本悟志!
三十六歳!
ちなみに一応独身ね!
……後で、君の名前も教えてよ?」
元気にそう言うと、私に財布を預けたまま走って行ってしまった。
――それが、私と悟志の出会いだった。