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愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情
剛がこちらを見て優美に微笑した瞬間(とき)、悟志へのすまなさで沈んでいた心は一気に浮き上がり、頬が熱く火照り、彼に私の総てを奪われてしまう。
新調した制服に身を包んだ彼は、一際大人びていた。
紺とえんじ色のストライプのネクタイをキッチリと締め、グレーの細身のシルエットのジャケットを羽織り、背筋を伸ばし佇む姿に暫し見惚れてしまうが、祐樹が私の胸に抱き着いてきて、ハッと我にかえった。
「ママ、綺麗だよ!」
無邪気に笑い、見上げるその瞳の輝きが悟志とそっくりで、私はドキリとする。
「ありがとうね、祐ちゃん……」
「あらあら、祐ちゃん、もう大きいのに、甘えん坊ね」
母がクスクス笑うが、祐樹は頬を膨らませた。
「違うよ!
いつもパパが、ママに言うでしょ?
綺麗だよ、可愛いよってさ。
パパは今それを言えないから、俺が代わりにママに言うの!」
「――」
胸に、グサリと何かが突き刺さる痛みを感じて、私は俯いた。