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愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情
シャボンの薫りが鼻腔を擽ると同時に、しなかやで力強い腕が私を素早く支え、道の隅へと引っ張った。
剛の、グレーの袖と白のブラウスに包まれた腕が、長い指が、今私の両手を掴んでいる。
彼の手は爪の先まで美しい。
この腕が、手が、指が、私を組み敷いて、肌をまさぐった事を唐突に思い出し、体温が急上昇して、頬が熱くなる。
「……危ないですから、手を繋ぎましょう」
剛は、優美に微笑むと、当たり前の様な仕草で右手で私の左手を握り締め、歩き出す。
「つ……剛さんっ」
高校生になって、母親と手を繋ぎ歩くというのは、おかしいだろうか。
周囲から変な目で見られたりしないだろうか?
私は、彼の手から伝わる温もりにときめきながら、そんな心配をしてしまうが、剛はまるでそんな私の胸中を見透かすかの様に、背を向けたまま言った。
「誰も、俺達の事なんて気にしてませんよ……
何なら、肩を抱いて歩きましょうか?」
「……っ!
そ、そそそそれはダメっ」
「それがダメなら、これはオッケー、という事でいいですね」
彼は、振り返り微笑を見せた。